中小企業診断士試験とは?概要とスケジュールを簡単に確認
中小企業診断士試験は、「日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格」として注目されており、経営・会計・法務・マーケティングなど幅広い知識が問われる非常に実践的な資格である。
経営コンサルタントとして独立開業を目指す人はもちろん、企業内でのキャリアアップやスキルの棚卸しをしたいビジネスパーソンにも人気がある。
この章では、まず試験の全体像と年間スケジュール、さらに合格までに必要な勉強時間の目安について解説する。
試験日程と実施概要(1次・2次・口述)
中小企業診断士試験と一言で言っても、実は3回の試験で構成されている。つまり、一度試験に合格すればおわり。というわけではない。
また、中小企業診断士試験は1年に1度しか実施されない。つまり、下記に示すどれか一つでも不合格になると次の挑戦は1年後、ということになる。だからこそ、中小企業診断士試験の勉強スケジュールは重要になる。
具体的に中小企業診断士試験は下記3つの要素で構成されている。
試験区分 | 試験形式 | 試験時期 | 合格率の目安 |
1次試験 | マークシート式(7科目) | 毎年8月上旬(2日間) | 約20〜25% |
2次筆記試験 | 記述式(4事例) | 毎年10月下旬(1日) | 約18〜20% |
2次口述試験 | 面接(10分程度) | 毎年12月中旬 | 約99%(形式的) |
1次試験では、の7科目が出題され、総得点420点以上かつ全科目40点以上が合格基準。得意科目で点数を稼ぐという戦略は一つの手として有効である一方で、苦手科目では最低でも40点以上を出さなければ不合格となる。得意科目・不得意科目でそれぞれどれくらいの点数を取るかを戦略的に考えることが勉強スケジュール、試験の点数に大きく影響する。
2次筆記試験は、与えられた事例に対し、設問ごとに論理的な解決策や分析を記述する力が求められます。1次試験とは異なり、記述式の試験である。ただ知識があれば良いというものではなく、各設問に対して自分の言葉で論述する練習が必要不可欠となる。
そして口述試験は、筆記試験を通過すればほぼ確実に合格できるとされるため、山場は1次と2次筆記試験。
中小企業診断士試験は幅広い知識を問われる試験であることがご理解いただけたと思う。
合格までに必要な勉強時間の目安
中小企業診断士試験は、難関資格に分類されることも多い。では、何を持って難関かどうかを決めるか。これが気になるところ。
資格の難関度を図る指標としてよく使われるのは「勉強時間」である。ということで早速、中小企業診断士試験に合格するまでに必要な勉強時間の目安は以下に記載する。
合格までの目標期間 | 必要な勉強時間の目安 | 1日あたりの平均学習時間 |
1年(短期集中型) | 約1,000〜1,200時間 | 約3〜4時間 |
2年(余裕を持った計画) | 約1,000〜1,200時間 | 約1.5〜2時間 |
なお、これはあくまで合格者の平均値である。全てが上記の時間に当てはまるとは限らない。300時間で合格するような人もいれば、1500時間以上かけるケースもある。
未経験者や触れたことのない知識がある場合は上記の目安に+100〜200時間見込んでおくことが一つの目安になるだろう。逆に、経済学や会計の基礎がある方であれば、学習時間を効率的に短縮することは可能になる。
勉強スケジュールを立てる前に知っておくべき3つのこと
中小企業診断士の合格は「スケジュールの立て方次第」といっても過言ではない。
なぜなら、中小企業診断士試験は1年に一度しか実施されないからだ。つまり、合格までに数年単位の時間が必要になる可能性が非常に高いということである。長い時間をかけて勉強をしたい!という人はほぼいないだろう。
だからこそ、計画的にスケジュールを立てて、1年で1発合格できるような戦略が必要なのである。
しかし、ただ計画を立てれば良いわけではなく、合格まで走り切るための3つの前提を押さえておく必要がある。
ここでは、スケジュール作成の前に必ず考えておくべき以下の3点を詳しく解説する。
自分に合った合格目標の設定(1年・2年)
まず最初に考えるべきは、「自分はどれくらいの期間で合格を目指すか?」という合格目標の設定である。1年で合格をしたいと考える人がほとんどであると思う。しかし、中小企業診断士試験の受験者の大半は社会人であり、平日の日中は勉強時間を確保することがほぼ不可能である。
それを踏まえると、中小企業診断士試験は、1年で一気に合格することも可能ではあるが、多くの受験生は1.5〜2年ほどかけて合格を目指すケースが多い。
学習期間 特徴 向いている人
1年合格 短期集中・学習量が多い 時間の融通が利く人、集中力がある人
2年合格 余裕を持って段階的に進める 忙しい社会人、育児中の人、学習習慣に不安がある人
目標期間によって、1日の勉強時間や使う教材、科目ごとの進め方が大きく変わる。短期合格を目指しすぎて、勉強スケジュール通りに勉強することができずに、挫折してしまう、諦めてしまうケースも多くある。
1年から2年かけて絶対に合格するんだ!という強い気持ちと、自分の無理のない範囲で継続できる勉強スケジュールを作ることが何よりも重要である。
各科目の難易度と優先順位を理解する
中小企業診断士の1次試験は7科目ある。ここで勘違いしてはいけないのが、1年を7で割って勉強スケジュールを組むというもの。
中小企業診断士試験は科目ごとで難易度が大きく違う。また、二次試験に関連のある科目は7科目中4かもKだけである。最短で合格を狙うのであれば、全科目を同じ重みで扱うのは非効率。
だからこそ、出題傾向や個人の得意・不得意に応じて科目ごとの優先順位をつけることが重要である。
以下は、一般的な受験者から見た、主な難易度と勉強時間の目安である。
科目名 | 難易度感(目安) | 学習時間の目安 | 備考 |
経済学・経済政策 | 難しい(特に文系) | 100〜150時間 | グラフ・理論の理解が必要 |
財務・会計 | 難しい(特に文系) | 100〜150時間 | 計算力・慣れが必要 |
企業経営理論 | 標準〜やや難 | 120〜160時間 | 出題数が多く重要科目 |
運営管理 | 標準 | 80〜120時間 | 実務経験者は取り組みやすい |
経営法務 | 難しい | 60〜100時間 | 暗記要素強め、出題傾向に癖あり |
経営情報システム | やや難 | 60〜100時間 | IT未経験者は要対策 |
中小企業経営・政策 | 易しいが範囲広い | 50〜80時間 | 暗記中心、直前対策も可 |
特に、経済学・財務会計・企業経営理論は合否を左右する“コア3科目”として位置づけられるケースが多い。
経済学は二次試験にはほぼ関連がないが、初学者には理解が難しい論点が多い傾向にある。
財務会計・企業経営理論は二次試験に密接に関連する科目であるため、一次試験の勉強を土台として、二次試験の記述問題に対応できる知識をつける必要がある。
モチベーション維持とスケジュール継続のコツ
勉強スケジュールを戦略的に作ることは、中小企業診断士に合格するための非常に重要な要素である。しかし、それよりも重要なことがある。それは、「作った勉強スケジュール通りに勉強し続けること」である。
いくら素晴らしい勉強スケジュールがあっても、実行されなければ絶対に合格できない。
では、「作った勉強スケジュール通りに勉強し続ける」ためには何が必要なのかというと、モチベーションを維持することである。
がんばろう!と思うだけで、頑張れたら誰でも中小企業診断士に合格しているはずである。がんばろうと思ってもどこかで挫折してしまうからこそ難関資格だと言われているのである。
そこでここからは、3つのモチベーション維持戦略を解説する。
① 習慣化の工夫
習慣化。これが簡単にできたら世話ないよ、、、と感じられた方もいると思う。だけれど、本当に重要なことなのでここで習慣化について書く。
習慣化のコツは「ハードルをとにかく下げて、”継続”することを第一目標にする」こと。
1日100問解こう!みたいな目標ではほぼ習慣化できない。なぜなら、これを毎日やるのは至難の業だから。もしこれができるなら、そもそもこのブログには辿り着いていないだろう。
まずは、ハードルの低い目標を立てて、継続することを第一に考えることをおすすめする。
例えば、TACのスピード問題集を最低でも毎日5問解く。というような感じだ。
この毎日5問解く習慣を1ヶ月、2ヶ月と続けていくとほぼ確実にそれ以上に解きたくなる。というよりも、物足りなくなく感じるはずだ。これが習慣化の第一歩。
とにかく、最初のハードルは限りなく低く、継続することを最優先にして、勉強をスタートさせることが重要だ。
② 可視化と達成感の仕掛け
可視化をすることで達成感を得る。これも巷では使い古された言葉だ。だけれど、本当に大切なことは間違いない。勉強の進捗を可視化せずに、ただ淡々と勉強を続けられる人であれば、それは多分すでに勉強の習慣がついている人だ。
そうじゃない人は、勉強の進捗を可視化させる何かをはじめよう。どんな方法でも構わない。可視化されて、自分の勉強が積み重なっていることが実感でき、合格まで一歩一歩進んでいることがわかれば良い。
この2点を押さえることで、あなたの勉強スケジュールは「絵に描いた餅」ではなく、「現実的に実行できる設計図」になる。
【1年計画】短期集中で合格を目指す勉強スケジュール例
「今年中に合格したい。いや、最速で決めたい!」という方に向けた1年計画の勉強スケジュールである。中小企業診断士の勉強は長丁場になりがちだが、1年での合格も不可能ではない。いや、実際にやってのける人は存在する。ただし、その道のりは決して簡単じゃない。
1年計画は「短期決戦型」である。つまり、スピードと集中力で勝負するタイプであり、効率が命となる。
月別スケジュール例(12ヶ月)
前半戦(8月〜翌年1月)
まずのこの前半半年間で7科目全てのテキストを読み終え、最低でも2周は問題集を解くということを目標とすることをおすすめする。
巷では、勉強雨する順番にまで過度に意識を向けているような気がするが正直、勉強する順番は「二次試験に使う科目かどうか?」という一点で優先度を決めて良いと思う。
つまり、まず先に手をつけておいた方が良いのが、財務会計、企業経営理論、運営管理。
次に手をつけておいた方が良いのが、経済学・経済政策、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策である。
上記を踏まえて前半6ヶ月間をさらに2分割して下記のような勉強をおすすめする。
8月〜10月
科目 | ポイント | |
8月 | 企業経営理論 | 中小企業診断士の実務にも役に立つ内容で比較的勉強内容が面白いと思いやすいためスタートダッシュの科目として使う。 |
9月 | 財務会計 | 計算が苦手で想像以上に勉強時間がかかるケースがあるため早い段階で取り組み、苦手だったとしても残りの期間で挽回できるようにしておく。 |
10月 | 運営管理 | 覚える量自体はその他の科目と比較すると少ないが、計算問題や図表の問題が出るケースがあるのでこれも早めに手を付ける。 |
11月〜1月
科目 | ポイント | |
11月 | 経済学・経済政策 | 図表を見て答えなければいけない問題が多く、単純な暗記では得点できないケースが多い。二次試験にはそこまで関係はないが早い段階で苦手かどうかを知る。 |
12月 | 経営情報システム | 文系の方には本当に馴染みがない分野。計算問題も若干出るが暗記が大多数。早めにインプットしてあとは繰り返し問題を解くことでカバー。 |
1月 | 経営法務中小企業経営・政策 | 頻出の単元をしっかり暗記することができれば高得点は狙えないかもしれないが、安定した得点を獲得することができる。暗記系のため、なるべく後半戦の詰め込みでも対応できる。 |
後半戦(2月〜7月)
後半戦は徹底的に過去問演習で対応する。後半戦は心が折れそうになってもとにかく過去問を解く。
ここで重要なのが、正解していたとしても、問題の選択肢全てにおいて何が間違っているのか?何が正解なのかを説明できる状態にして進めていくことである。
後半戦の6ヶ月は週に直すと24週間ある。そして、1週間に2つの過去問を解くとすると、単純計算で48回の過去問を解くことができる。7科目で割ると大体、1科目あたり約6年分は解くことができる。
少し余裕をみて、7科目で5年分の過去問を解き、その全てで8割は取れる状態に持っていく。
間違えた箇所はチェックを入れておき、試験の最後の最後まで何度も繰り返し解く。
ここまでやれば、正直合格ラインには余裕で届くはずである。
要は、頭の良し悪し、効率うんぬんということももちろんあるのだが、1番重要なことは計画的に淡々と問題を必要な分だけ解き続けることである。
二次試験対策(8月〜10月)
二次試験でも市販のテキストをもとに過去問演習を中心に行う。上記で説明したように、インプットと過去問演習を相当数こなしているため基本的な知識はついているはず。
あとは記述式で抑えなければいけないポイントは何かを理解して4つの出題ごとに、何を求められているのかを理解して解く練習を繰り返す。
【2年計画】働きながらでも無理なく合格する学習計画
月別スケジュール例(24ヶ月)
前半戦(8月〜7月:前半の1年)
二次試験に関係する科目は勉強期間を長めに取る作成で進める。
科目 | ポイント | |
8月・9月 | 企業経営理論 | 中小企業診断士の実務にも役に立つ内容で比較的勉強内容が面白いと思いやすいためスタートダッシュの科目として使う。 |
10月・11月 | 財務会計 | 計算が苦手で想像以上に勉強時間がかかるケースがあるため早い段階で取り組み、苦手だったとしても残りの期間で挽回できるようにしておく。 |
12月・1月 | 運営管理 | 覚える量自体はその他の科目と比較すると少ないが、計算問題や図表の問題が出るケースがあるのでこれも早めに手を付ける。 |
2月 | 経済学・経済政策 | 図表を見て答えなければいけない問題が多く、単純な暗記では得点できないケースが多い。二次試験にはそこまで関係はないが早い段階で苦手かどうかを知る。 |
3月 | 経営情報システム | 文系の方には本当に馴染みがない分野。計算問題も若干出るが暗記が大多数。早めにインプットしてあとは繰り返し問題を解くことでカバー。 |
4月 | 経営法務 | 頻出の単元をしっかり暗記することができれば高得点は狙えないかもしれないが、安定した得点を獲得することができる。暗記系のため、なるべく後半戦の詰め込みでも対応できる。 |
5月 | 中小企業経営・政策 | 上記同様。 |
6月・7月 | 苦手科目のインプット | 7科目の中で苦手な箇所を重点的にインプット。特に頻出の計算問題はこの2ヶ月で確実に得点できるようにしておく。 |
後半戦(8月〜7月:後半の1年)
これも1年計画と似ているが徹底的に過去問対策を行う。
1年は52週あるため、1週間に1科目の過去問を解けば余裕で7科目5年分の過去問が解ける。仮に順調に勉強できたとして、35週間かかる。残りの約15週間で間違えた問題を2度と間違わなくなるまで繰り返しとく。
これで準備はバッチリ。
二次試験対策
これは、1年計画とほぼ同様である。
二次試験でも市販のテキストをもとに過去問演習を中心に行う。上記で説明したように、インプットと過去問演習を相当数こなしているため基本的な知識はついているはず。
あとは記述式で抑えなければいけないポイントは何かを理解して4つの出題ごとに、何を求められているのかを理解して解く練習を繰り返す。
まとめ|自分に最適なスケジュールで合格をつかもう
中小企業診断士試験は、ただの暗記大会ではない。広範な知識に加えて、地道な努力と戦略が求められる、まさに「社会人の知的筋トレ」とも言える試験である。
だが、安心してほしい。合格者は特別な人種ではない。自分に合ったスケジュールを、淡々と、時にあがきながらも継続した人こそが、最後に勝ち残っているのが現実である。
1年で一気に駆け抜けるのもよし、2年かけてじっくり攻略するのもよし。重要なのは「○○さんの勉強法がすごい」などと他人の芝生を見て焦ることではなく、自分の生活スタイルとメンタルにフィットする学習設計を作ることである。
そして何より、スケジュールは「神聖な契約書」ではない。疲れたら休めばよいし、サボった翌日は少し多めにやればよい。続けられる人は、完璧を目指さずに“ゆるく真面目”なのである。
最後に、これだけは断言できる。
中小企業診断士に合格するのは、「天才」ではない。
しつこく続けた“凡人”である。
普通のことを誰にも真似できないくらい継続すること。これが合格するためのたった一つの方法だ。
今日からスケジュール帳の1ページ目にこう書いてほしい。
「ムリせず、でも諦めず。普通のことを誰にも真似できないくらい継続し続ける。そして合格を掴み取る。」と。
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